9月は少しだけ暑さが和らぎますが、まだまだ残暑が厳しい季節です。さらに、真夏よりも降水量が多くなる傾向があるので、ペットの身体に与える影響は決して少なくありません。それに加え、暑い夏を頑張って乗り切った身体は、体力や免疫力が低下していることが多いようです。そのため、やっと厳しい夏が終わったと安心していた矢先に、ペットが急に体調不良を起こしてしまうことがあります。ペットの体調変化に気付きやすいのは、いつも側にいるオーナーさんです。大切な愛犬や愛猫が、暑い季節に患いやすい病気にかかっていないかどうかチェックしてみましょう。早い段階で発見できれば早期治療と回復が可能です。全く症状がなく元気であれば、ひとまず安心できるので、元気そうな子の状態もチェックすることをおすすめいたします。
◇熱中症
人間と同じように犬も猫も熱中症を発症します。特に、今年のように酷暑が続く場合は、体力と免疫力が低下しやすいので、まだまだ気が抜けません。初期症状は「呼吸が荒い(パンティング)・ぐったりしている・よだれを流す・口や目の充血・吐き気や下痢・ふらつき」です。重症化すると意識消失やチアノーゼなど、命が危険な状態になるケースも少なくありません。軽度であれば、動物病院で適切な治療を受けることで早期回復が見込めます。
◇食中毒
蒸し暑い日が続くとペットの間でも食中毒が急増します。いつも与えているフードやおやつだけなら大丈夫だと安心してはいけません。気温と湿度が高い状態が続けば雑菌やカビが増殖してしまいます。食べ残しの食事や飲料水の中にこぼれ落ちたフード、ペットが隠したままになっている大好物のおやつ。食べ物を長時間放置すれば急速に腐敗が進み、それを食べたペットが食中毒を起こすリスクが高くなります。夏に多い食中毒全般に見られる症状は「嘔吐・下痢・食欲低下・発熱」です。これらは熱中症でも起こり得る症状ですが、原因を特定するには獣医師の診断が必ず必要になります。症状が軽く自然治癒するケースもありますが、安易な判断で苦しませることにもなりかねません。原因菌によっても治療方法が異なりますので、食中毒のような症状が見られた場合はすぐに動物病院を受診してください。
◇フィラリア症
フィラリア症は、蚊が媒介する寄生虫が体内に入ることで発症する恐ろしい病気です。フィラリア症を患った犬の血を吸った蚊が、他の動物の血を吸うときに媒介されます。フィラリアは、体内で成長すると心臓の肺動脈へ移動し、生命の源である心臓を徐々に蝕んでいく寄生虫です。感染後すぐに重篤な症状を起こすケースは少ないとされていますが、いったん寄生されてしまった心臓のダメージは回復が見込めません。症状は「咳・呼吸困難・血尿・腹部膨満・食欲減退・体重減少」など。大変危険なショック状態に陥るケースも少なくありません。いったん感染してしまうと、外科手術や対症療法などによる治療が行われますが、リスクが高く手術が困難なケースが多いとされています。ペットの命を脅かす危険な病気ですが、フィラリア症は、ワクチン投与で100%予防できる病気です。犬に多い寄生虫病として知られていますが、猫に感染するケースも報告されています。日本には、この病気を媒介する蚊が発生しない地域はありません。ワクチン予防で確実に防ぎ、恐ろしいフィラリアから守ってあげましょう。
◇皮膚炎・外耳炎
夏から秋にかけては、皮膚炎を発症するペットが急増します。暑い季節に多い原因は、アレルゲンが含まれる植物、ノミ・ダニ、細菌類などによるものです。症状が出ると、痒い部分に爪や歯を立ててしまうため、さらに悪化してしまうケースも少なくありません。室内の飼育スペースを清潔に保ち、外から原因物質を持ち込まないように工夫しましょう。外出させた後は、汚れを落として清潔に保ち、室内の飼育スペースもこまめに掃除します。身体の特定部位を掻き毟るような行動が見られたら、直ちに皮膚の状態を確認してください。赤くなっていたり血が滲んでいたりする場合は、早めに動物病院で状態を診てもらいましょう。
◇尿路結石
暑い季節は体内の水分が奪われやすく、水分不足が引き金となって尿路結石の発症率が高まります。尿の中にあるミネラル成分がくっついて結晶化する病気で、尿が通る臓器(腎臓・尿管・膀胱・尿道)に発症します。症状は「頻尿・排尿時の痛み・血尿・食欲低下・失禁」など。おしっこの回数が多かったりトイレが辛そうだったりする様子が見られたら、おしっこの色を確認してください。異常がある場合は、早めに動物病院で診察を受けましょう。早期発見して治療を開始することができれば、重症化(石が尿路を塞ぎ排尿できない危険な状態)を防ぐことができます。