よく耳にするアニマルセラピーとは、広い意味で犬や猫など動物に触れることで人間の心や体の健康、福祉などの向上を図るものです。
公益社団法人日本動物病院協会のHPによると、アニマルセラピーは「人と動物のふれあい活動(Companion Animal Partnership Program=CAPP)と定義づけています。活動には次の3つのタイプがあります。
・動物介在活動:動物と触れ合って、情緒を安定させたり、生活の質を向上させるための触れ合い活動です。
・動物介在療法:医療現場において、専門的な治療のために動物を介在させる補助療法です。
・動物介在教育:動物と一緒に学校など教育機関を訪問し、子どもたちに動物との正しい触れ合いかたや、命の大切さを学んでもらう活動です。
「動物介在活動」が一般にアニマルセラピーと呼ばれることが多いようです。ここでは主に動物介在活動を中心に解説します。
実は仕事をする犬や猫たちは、普通の家庭で飼育されている子たちです。ウサギやモルモットのほかに、ハムスターや小鳥もいます。
犬や猫の場合、「人やほかの動物が好き」「免疫力がついた1歳以上」「ワクチン接種などの健康管理やしつけができている」などの条件をクリアした子が飼い主さんと一緒にアニマルセラピーの仕事をしています。
仕事内容とは「触れ合う」こと、それだけです。いろいろな人に触ってもらい、声をかけてもらうこと、これが仕事です。もちろん吠えたり唸ったりしません。
実際に犬や猫たちの仕事の効果はどのようなものがあるのでしょうか。
緩和ケア病棟にさまざまな病気のため入院している患者10人が犬・猫・ウサギと月に一度30分程度ラウンジや病室で触れ合うという実験がありました。
触れ合った患者さんからは、「安心感」「癒し」「生きていることの確認」「苦痛からの解放」などを得たという回答がありました。
例えば通じ合える動物、話し相手として動物の存在から安心感を得たようです。犬や猫に触れた際に感じるぬくもりから癒される人も多くいました。病気の苦痛や緊張感からも解放された、という感想を抱いた人もいると報告されています。
10代から30代の健康な青年(男性20名、女性4名)が、2週間ごとに3回犬と触れ合うことで不安や怒り、緊張などが改善されたという研究結果もあります。もともと元気で、活動性の高い青年においても、気分を前向きにする効果があると考えられると報告されていました。
アニマルセラピーでは、先に説明した通り一般の家庭で飼われている犬や猫が参加しています。愛犬・愛猫が、「人見知りをしない」「人が大好き」「1歳以上」「定期健診や感染予防ワクチンを受けている」ということなら飼い主さんと一緒に参加を検討してみてもいいですね。見慣れないものや、大きな音をあまり怖がらないこともポイントです。
さらに愛犬の場合は、基本的なしつけである「待て」「おすわり」などができる、飼い主さんがしっかりコントロールできることも重要。
他の人に対して安心感や癒しを与える仕事をしている愛犬・愛猫の姿に、新たな発見があるかもしれません。
今すぐ参加できなくても、かかりつけの獣医さんに相談するほか、レポートや報告を本で読んだり、ネットで調べてみたりするのも楽しいのではないでしょうか。
ただ、もともと人見知りだったり、怖がりだったりする愛犬・愛猫にとってはストレスになってしまいます。アニマルセラピーに参加したいと思ったとしても、無理は禁物です。
もちろんアニマルセラピーの仕事ができない子でも、飼い主さん一緒に家で過ごす、それだけでも十分なのです。一緒にいるだけで気持ちを癒し、ぬくもりを与えてくれています。
いやなことがあって気分が落ち込んだときに、愛犬・愛猫の存在が元気づけてくれたという経験はないでしょうか。また体調が悪いときでも、なんとなく安心感を覚えた、寄り添ってくれたということがあったかもしれません。
実際に犬や猫などペットの存在が、人の気持ちを癒すという研究結果も報告されています。身体に触れることで血圧を下げる、興奮や心拍数を鎮めるという報告もあります。
犬と暮らすようになって、規則正しい生活をするようになって元気になった人、猫が待っているからと、深酒をせず早く帰るようになった人もいるそうです。
家庭で飼育されている犬や猫の中には、施設などに出向いて仕事をしている子もいれば、飼い主さんたちの気づかないところで「癒しや元気を与える」仕事をしている子たちがいるともいえるでしょう。
参考資料
公益社団法人日本動物病院協会「アニマルセラピー 人と動物のふれあい活動(CAPP)」
https://www.jaha.or.jp/hab/capp/
緩和ケア病棟における動物介在活動に参加したがん患者の体験
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/34/5/34_20110922006/_pdf/-char/ja
動物介在活動がもたらす心理的効果
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/37/3/37_20140722399/_pdf/-char/ja