まずJRの在来線、新幹線に乗車する際のペット持ち込みについてのルールからご紹介します。
JRグループが定める「旅客営業規則」においては、持ち込みが可能な条件について、主に以下のように記されています。
・小犬、猫、ハトまたはこれらに類する小動物(猛獣やヘビの類を除く)
・長さ70センチ以内で、タテ・ヨコ・高さの合計が90センチ程度のキャリーケースに入れる
・重さはケースと動物を合わせて10キロ以内
※いずれも抜粋、要約
動物は「有料手回り品」の扱いとなり、同乗する場合には普通手回り品きっぷ(290円)の購入が必要です。なお身体障害者補助犬法に定める盲導犬、聴導犬、介助犬を本人が伴って乗車する場合は上記の限りでなく、料金も掛かりません。
私鉄についてもそれぞれ定められた営業規則があり、ペットの持ち込み乗車に関するルールは各社のウェブサイトで確認することができます。
各社とも大筋はJRの「旅客営業規則」に倣った形となっていますが、関東にある私鉄の多くは手回り品きっぷの購入を必要としない、つまり無料でペットの持ち込みが可能となっています。また持ち込みができる動物の定義やキャリーケースのサイズ、重量の規定についても会社によって若干の差異があります。
どこまでを「持ち込み可」とするのか、その見解は会社ごとに異なる場合も考えられるため、不明な点については各社に事前の問い合わせを行うのが良いでしょう。
JRならびに私鉄各社が定めるルールをそれぞれ見ていくと、すべての鉄道各社で持たれている基本的な共通認識がいくつか見えてきます。それらはペットと一緒に電車を利用するすべての人が、その前提として必ず守らねばならない点であると考えていいかと思います。
・ペットの全身が隠れる状態でケースに収納の上、乗車する
・犬の場合、ケースのサイズ規定に合わない犬種の同乗はできない
・小動物でも特定動物など危険性の高い動物は持ち込めない
・条件を満たしていても、他の乗客に危害や迷惑が及ばないよう注意を求めている
・身体障害者補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)についてはそのまま乗車できる
明文化されているのは「ルールの順守」ですが、それらを定める理由や目的には「マナーの順守」の願いが含まれています。電車も公共の場であり、動物と暮らしていない人、動物が苦手な人、動物アレルギーを持っている人なども含め、いろんな人たちが決して広くないスペースを共有しながら移動していることへの理解や配慮を求める意図が、根本には強くあります。
電車以外の公共交通機関においても、ペットとの同伴利用についてのルールが存在します。
バスについての乗車ルールは、鉄道各社とほぼ同じ内容で定められていますが、「他の乗客の迷惑になってはいけない」という意味合いの表記は、鉄道と同じく全社共通です。
またバスは電車以上に過密な空間となりやすいため、多くの会社のウェブサイトには、混雑時の持ち込みをお断りする場合がある旨の記載が見られます。
船舶については、船内のスペースや設備など、受け入れの状況によって持ち込みの可否ならびに条件が分かれてきます。長距離の航路においてはペットをケージから出して同じ部屋で過ごせる個室を備えた大型船舶など、ペットと一緒に船旅を楽しめるサービスを用意しているフェリー会社もあります。
飛行機(国内線)の利用については、電車などに比べてその制約は多く、厳しくなります。
犬や猫は原則として客室に入ることができず、貨物室内のスペースへ入ることになりますが、飛行機の機内は気圧の変動など特殊な環境下にあることから、個体によっては輸送中に体調不良を起こすリスクも考えられます。
このため、利用にあたっては事前に確認書や同意書(運送中に体調を崩したり亡くなったりした場合でも、航空会社に一切の責任を問わない旨の同意確認)の提出が求められます。また呼吸困難の危険を伴う恐れがあると考えられる、鼻の低い短頭種(各航空会社が指定する犬種、猫種)などについては乗せること自体ができません。飛行機を利用できる条件下にあるペットでも、旅行にあたっては事前の十分な健康管理が必要となります。
※国際線においては、上記に加えて渡航先によってマイクロチップや検査証明、検疫証明など、各国の定める規制や条件に沿った各種手続きが必要となります。またペットの持ち込み自体を禁じている国もあります。
ペットと一緒に公共交通機関を利用する際のルールが明確に定められていても、実際にそれを守って利用する側の人間が備えておくべきマナーの意識がなければ、せっかくのルールも意味を成さないものとなってしまいます。
特に人間と同じスペースで移動する電車やバスの車内において、「改札さえ通れれば、怒るような人はいないだろうから」と、しばしばマナーを逸脱した行為が見られるのは残念なことです。
キャリーケースを開けてペットの頭を外に出してみたり、キャリーケースを地べたに放置してスマホの画面に夢中になっていたり……周りの乗客とのトラブルにつながるのはもちろん、ペットがキャリーから外に飛び出してしまう例も実際にあるなど、人間の管理の甘さや油断が取り返しのつかない事態を呼ぶ場合も十分に考えられます。
体の一部であっても決して外には出さない、キャリーケースから目を離さないなど、不特定多数の人たちに近い場所でペットを連れている人間として、そして一緒に暮らす家族としての監督責任を怠ってはいけません。公共交通機関の利用に際しては、会社の定めるルールを守ると共に、周囲への配慮につながるマナーの意識をしっかり備えておきましょう。