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獣医師
齋藤厚子
健康な皮膚は食事から。皮膚バリアを健康に保つフード。

皮膚はどんな役割を果たしている?

皮膚には外界からの刺激に対するバリア機能、体温調節機能、免疫器官としての機能、感覚器官としての機能など、様々な機能があります。
また、体調を反映するバロメーターとしても重要な役割を果たしており、脱水の指標となったり、栄養状態や内臓機能の低下がある場合には毛艶の低下、毛が抜けやすくなる、フケが多くなる、感染症が起こりやすくなるなどといった変化が現れます。

これらの機能の中でも重要なのはバリアとしての機能です。
外界に接している皮膚は、乾燥や紫外線、細菌やウイルスなどの微生物、刺激物質、アレルギーの原因となりうる物質などから体を守ってくれています。

皮膚は何層もの細胞が重なって構成されており、表皮の最深部にある基底層という部分で細胞が分裂して新しい層が作られ、成熟するに伴って徐々に表層へ移動し、最も表層の角層で角化した細胞が自然に剥がれて脱落することでターンオーバーを繰り返しています。

このターンオーバーに乱れが生じると、脱落するはずの古い皮膚が残ったり、新しい皮膚細胞が成熟する前に表皮が脱落してしまうなどといった状態になり、皮膚のバリア機能に問題がおこります。
バリア機能を損なった皮膚は表面からアレルゲンや微生物の侵入・増殖を許してしまい、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎、膿皮症やニキビダニ症などを発症しやすくなるのです。

では、どのような状態になると皮膚のターンオーバーが乱れるのでしょうか?

原因の一つは乾燥です。
皮膚には水分を保持するためにセラミドやヒアルロン酸という成分が存在しており、皮膚の細胞と細胞の間に水分を保持し、細胞と細胞の間をすきまなく埋めることで外部からの刺激をシャットアウトしています。
これらの成分が不足すると皮膚の保湿機能が低下し、乾燥によって皮膚が脱落しやすくなってしまいます。

特にセラミドはアトピー性皮膚炎の患者では減少していることが報告されており、そのために皮膚のバリア機能が低下して様々なアレルゲンが皮膚から侵入し、免疫反応が起こると考えられています。

他には、皮膚の健康を守るビタミンなどの栄養素不足などによってもターンオーバーが低下します。
健康な皮膚を保つためには栄養学的にバランスの取れたフードを与えることが重要です。

皮膚病用のフードにはどんな特徴がある?

皮膚疾患用のフードとして一般的に販売されているものにはいくつか特徴があります。

含まれる成分や原料はフードによって様々なバリエーションがありますが、多くのフードは皮膚の健康をサポートする栄養素や、皮膚の炎症反応を抑える成分、皮膚の保湿機能を高めるような成分が配合されています。

その中でも代表的なものをいくつかご紹介します。

・良質なタンパク質
犬や猫は全身が毛で覆われ、さらに季節による換毛もあり、皮膚や被毛を作るためにヒトよりも多くのタンパク質を消費するといわれています。
皮膚の角質や被毛を構成するケラチンはタンパク質の構成成分であるアミノ酸から構成されており、摂取したタンパクの約30%が皮膚や被毛に使われます。

そのため、良質で消化性の良いタンパク質を摂取することが健康な皮膚の維持には欠かせません。
中でも低分子のタンパク質や加水分解されたタンパク質は消化性が高く、アレルギーの原因にもなりにくいため、アレルギー疾患の予防・治療としても用いられます。

・ビタミン類
ビタミンB群は皮膚の調子を整える成分として知られています。
中でもビタミンB2、B6、B12、ビオチンなどは皮膚のターンオーバーをサポートしたり、皮膚を作るタンパク質の分解や合成を助ける作用などがあり、健康な皮膚の生成には欠かせない成分です。

アトピー性皮膚炎で不足しているとされるセラミドの合成にも、ビタミンB群とタンパク質を一緒に摂取することが効果的といわれています。

その他の主なビタミンには、以下の様な作用があります。
ビタミンA:皮膚のターンオーバーの正常化、皮脂の分泌調整
ビタミンC:抗酸化作用、コラーゲンの生成
ビタミンE:抗酸化作用、血行促進作用

・不飽和脂肪酸
オメガ3脂肪酸(EPAやDHA、αリノレン酸)には炎症を調整して抑制する働きがあり、アトピーやアレルギー性皮膚炎の改善効果が期待できます。
またオメガ6脂肪酸(リノール酸)は皮膚バリアの構成成分で、不足すると毛艶がなくなったり、毛がパサパサになったりします。
どちらも皮膚に良い効果が期待できますが、たくさん摂ればいいというものでもなく、バランスよくとることが重要とされています。


また、皮膚疾患に限ったことではありませんが、防腐剤や酸化防止剤などの人工添加物が使われていないフードが理想的です。
フードは開封したらできるだけ短期間で消費できるサイズのものを選び、フード自体の酸化やカビの発生が起こらないように気を付けましょう。

皮膚の健康に役立つ成分

フードに含まれる成分以外にも、皮膚の健康増進のための様々な成分がサプリメントとして販売されています。

・セラミド
セラミドは表皮の細胞と細胞の間に存在する細胞間脂質という成分で、皮膚の水分保持に重要な役割を果たしています。
アトピー性皮膚炎の動物ではセラミドが不足していると報告されているため、外からセラミドを補ってあげることで皮膚の保湿状態を改善し、バリア機能を高める効果が期待できます。

・乳酸菌または乳酸菌生産物質
腸内細菌は全身の免疫機能を調整する重要な役割を担っていることがわかってきています。
皮膚で起こる炎症にも腸内の免疫状態が影響するため、腸内環境を整えることは皮膚の健康を守ることに重要な意味を持ちます。
腸内環境が整うことで免疫状態が正常化すると、免疫の過剰反応によっておこるアトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー症状が緩和することが期待できます。

腸内環境を整えるためには善玉菌を摂取する、善玉菌を増やす環境を作る、善玉菌によって産生される発酵代謝産物(乳酸菌生産物質)を摂取する、などといった方法があります。

乳酸菌を摂取することは従来体に良いとされて非常になじみのある方法ですが、摂取した乳酸菌が胃酸の影響を受け腸に届きにくく、体に定着しないこともあるのが問題でした。

乳酸菌生産物質は善玉菌が腸内で産生する発酵代謝産物を乳酸菌の培養によって抽出したもので、IgG抗体を上昇させて免疫細胞の働きを助けたり、もともと腸内にいる善玉菌を増やしてくれる作用があり、さらに胃酸の影響を受けることなく効率よく腸内に届きます。

・βグルカン
βグルカンはキノコなどに含まれる食物繊維の一種で、免疫力を上げる効果から抗腫瘍作用がある成分としてよく知られている成分です。

実はβグルカンにはヒアルロン酸の2倍の保湿力があり、コラーゲンの生成を増加させる効果もあります。
そのため、皮膚の保湿力を高め、皮膚を若々しく保つ効果が期待できます。

・核酸(DNA、RNA)
細胞の中心(核)に存在する核酸は、皮膚の細胞が正常に分裂するのに必要な成分の一つです。
核酸を補ってあげることで細胞分裂を活発にし、皮膚の新陳代謝を高める効果が期待できます。


このような成分を補助的に摂取することで、皮膚の健康状態を良好に保つサポートができます。

終わりに

皮膚の健康は全身状態に大きく関わります。
ヒトも便秘になるだけで皮膚の状態が悪化するように、動物も体に不調がある場合には皮膚の状態が悪くなります。
逆に言えば、皮膚の状態を健康に保つことは皮膚表面だけの問題ではなく、体の免疫状態や腸内環境の状態を良好に保っている指標にもなります。

犬猫の皮膚は被毛で覆われているために、脱毛や皮膚炎が起こった時にしか直接じっくりと見ることはないと思いますが、毛艶が悪い、フケが多いなどといったちょっとした変化に気づいてあげることは、体に隠れた不調を早期に発見する助けになります。

何となく皮膚の調子が悪いという場合には一度健康診断を受け、問題がなければフードを見直してみるのも健康寿命を延ばす一つの秘訣かもしれません。

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