犬の上皮小体機能亢進症とは
上皮小体が活発に活動してしまう疾患です。
上皮小体とは、甲状腺の近くにあるホルモンを分泌する器官で、副甲状腺と呼ばれることもあります。
上皮小体はパラソルモンと呼ばれるホルモンを分泌しています。パラソルモンは、骨の構成成分であるリンとカルシウムを骨から溶出させる働きがあります。上皮小体機能亢進症になってしまいますと、パラソルモンが異常に分泌され、血液中のカルシウム濃度が上昇します。
上皮小体自体に問題が起こって発症する原発性上皮小体機能亢進症と、別の原因から上皮小体機能亢進症が発症する二次性上皮小体機能亢進症があります。
犬の上皮小体機能亢進症の症状とは
パラソルモンの作用
パラソルモンは、骨、腎臓、腸に対して作用します。
骨は大きなカルシウムの貯蔵臓器と言えますが、パラソルモンによってリンとカルシウムを骨から溶出させてしまいます。
腎臓におけるカルシウムおよびマグネシウムの再吸収を亢進します。リンの再吸収を抑制して排泄させてしまいます。そのため、血液中のリンの濃度が低下します。
上皮小体機能亢進症の症状
上皮小体機能亢進症の臨床症状は、無症状の場合から重篤な全身性の場合までさまざまです。
高カルシウム血症における臨床症状としましては、元気消失、食欲不振、震え、神経過敏、多飲多尿、嘔吐、下痢、便秘などさまざまです。
高カルシウム血症が認められる疾患として、腎臓病、アジソン病、腫瘍などが挙げられますので、鑑別診断が必要です。
犬の上皮小体機能亢進症の原因とは
原発性上皮小体機能亢進症
一般的には、上皮小体に発生した機能的腺腫が多いとされています。また、時に腫瘍が認められることもあります。
二次性上皮小体機能亢進症
二次性上皮小体機能亢進症は主に栄養性と腎性にわけられます。
栄養性二次性上皮小体機能亢進症は、ホームメイド食などで栄養バランスの悪い食事が与えられていた場合に起こり得ます。最近では良質なペットフードが市販されているため発生はまれです。
腎性二次性上皮小体機能亢進症は、腎不全の進行に伴い活性型ビタミンD3の腎臓での合成が低下し、腸管からのカルシウム吸収が減少することによって起こります。また、高リン血症になることで上皮小体からのパラソルモン分泌が上昇します。
犬の上皮小体機能亢進症の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- キースホンド
高齢犬で診断されることが多いですが、犬での発生頻度は高くはありません。
キースホンドが好発犬種とされています。
犬の上皮小体機能亢進症の予防方法について
原発性上皮小体機能亢進症
原発性上皮小体機能亢進症は、予防方法はありません。早期発見、早期治療をおこないましょう。
二次性上皮小体機能亢進症
栄養性二次性上皮小体機能亢進症は、バランスが適切な総合栄養食を与えれば予防することが出来ます。
腎性二次性上皮小体機能亢進症は、腎不全と診断された際にリン摂取の制限、リン吸着剤の投与で予防できる可能性があります。
犬の上皮小体機能亢進症の治療方法について
対症療法
高カルシウム血症による臨床症状が認められている場合は、まずは対症療法をおこないます。外科的治療をおこなうまでに臨床症状を改善させるために短期的におこなう場合もあります。
点滴をおこないながら、利尿剤を投与します。利尿剤を投与することで、カルシウムは尿中に排泄されるようになります。利尿剤のみで高カルシウム血症が改善されない場合は、副腎皮質ホルモン剤を投与します。副腎皮質ホルモンは腎臓でのカルシウムの再吸収を抑制する作用があります。
外科的除去
上皮小体機能亢進症の場合、根本的な解決には外科手術が必要となります。腫大している上皮小体の摘出をおこないます。
術後すぐに血液中のカルシウム濃度が下がるケースもあれば、数日かけて緩やかに下がるケースもあります。
1つの腫大した上皮小体を摘出し、残りの3つが委縮しているような場合あります。このような場合は、低カルシウム血症が見られた場合、カルシウム製剤やビタミンD製剤での治療が必要となります。
外科手術が適切におこなわれ、その後カルシウム濃度が安定していれば予後は良いと言われています。
二次性上皮小体機能亢進症
栄養性二次性上皮小体機能亢進症は、バランスのとれた総合栄養食を与えます。改善が見られない場合は投薬を検討します。
二次性上皮小体機能亢進症は、リンを制限した腎臓療法食の給与を開始し、それでもリンが高値を示している場合にはリン吸着剤の投与を検討します。