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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の気胸とは

呼吸器の一部などから空気が胸腔内に漏れ出した状態です。

気胸とは、肺や気管、気管支などの呼吸器、または食道の一部に小さな穴が開き、胸腔内に空気やガスが漏れることによって、肺が十分に膨らめなくなる状態をいいます。

胸の中は、肋骨、胸骨、背骨に囲まれ、その間に存在する筋肉と、上下に動く横隔膜という筋肉によって作られた密閉空間です。
その空間内で肺が十分に膨らむことによって、血液中に十分な酸素が行き渡り、動物は活発に活動できます。

しかし、気胸になると、限られた胸腔内が肺の外に漏れた空気によって占拠され、肺が膨らむスペースが制限されてしまいます。
肺が十分に膨らまないと換気が悪くなり、呼吸が苦しい、という状態になってしまいます。

漏れる空気の量が多いと、漏れた空気による圧迫で片側の肺が完全にしぼんだ状態となり、胸の左右を分ける縦隔や、胸腔内を通る血管や心臓をも圧迫して、呼吸・循環不全状態となります。(緊張性気胸)
この場合は救急処置をしないと命に関わる危険な状態です。

猫の気胸の症状とは

呼吸器症状がみられます。

気胸にも軽度の気胸から重度の気胸まで、程度には大きな違いがあります。

主に見られる症状は以下の通りです。
・呼吸が浅く速い
・開口呼吸している
・元気がない
・食欲が落ちている
・舌の色が青っぽい(チアノーゼ)
・粘膜が蒼白
・胸がいつもより膨らんでいる
・呼吸困難
・頻脈
・横になったまま起き上がれない
・ぐったりしている(ショック状態)
・意識障害

空気の漏れが一過性であれば、ある程度の状態で安定し、時間の経過とともに徐々に改善しますが、進行性の場合には緊張性気胸に移行する危険があり、処置が遅れると命に関わります。

猫の気胸の原因とは

多くは外傷性に発生します。

猫の気胸は、高所からの落下や交通事故など、外傷によっておこるものがほとんどです。
強い衝撃が胸に加わることによって肺や気管などの呼吸器が部分的に損傷し、そこから空気が漏れておこります。
または胸壁にできた深い傷から、外界の空気が胸腔内に入り込むことによっても起こります。

稀に猫同士のケンカによっておこりますが、爪では肺を損傷するほど深い傷ができることは多くありません。
この場合の多くは咬傷によって発生します。

自然気胸がおこることもあります。

肺や呼吸器の疾患がもとで気胸になる場合を、自然気胸といいます。

例えば、肺の慢性炎症などによって、ガス交換を行っている肺胞という小さな袋状の肺組織が少しずつ壊れ、ブラあるいはブレブと呼ばれる大きな袋が肺にできていることがあります。
そのような肺はすでにガスを交換する機能は失われており、風船のように空気を蓄えるだけの袋になっていますが、その部分が何らかのはずみで破れると、空気が漏れ出し、気胸を起こします。

自然気胸となる原因としては、
・気管支炎、喘息
・肺腫瘍
・感染性肺炎(細菌・真菌・ウイルス感染)
・肺膿瘍
・寄生虫症(肺吸虫、肺虫、条虫)
・食道の損傷
・異物による穿刺
などが挙げられます。

呼吸器以外で、同じく胸腔内を通過する食道の壁に穴が開くような損傷がある場合にも、気胸が発生することがあります。
この場合、損傷した食道に胃や腸から移動してきたガスが通ることによって、気胸が発生します。

医原性の気胸も報告されています。

残念ながら、医療処置によって気胸となってしまうことも報告されています。
麻酔処置時の気管挿管による気管損傷、人工呼吸管理時に肺に圧をかけすぎることなどによっておこることがあり、また検査や治療のために胸腔穿刺を行った際に肺を損傷しておこる場合もあります。

猫の気胸の好発品種について

好発する品種はありません。

特にありません。

猫の気胸の予防方法について

外に出さないことが予防策になります。

交通事故や高所からの落下、ケンカなどによる発生を防ぐためには、室内飼育を徹底することが推奨されます。

マンションの高層階からの落下も割とよくある事故です。
窓を開ける際は網戸を必ず閉めておくようにし、ベランダに出る際は、猫が一緒に出ないように気を付けましょう。

猫の気胸の治療方法について

軽度の気胸は経過観察します。

漏れ出た空気の量が少量で、症状が軽度の場合は、処置をせずに安静にして経過観察をします。
必要に応じて酸素吸入などを行うこともありますが、多くの場合はじきに酸素吸入も必要なくなり、漏れた空気も自然に吸収されて改善します。

これは、胸に強い衝撃が加わったことによって一過性に空気が漏れ、時間の経過とともに損傷部位が自然にふさがったという場合です。
気胸が改善した後でも、しばらくは安静に過ごし、再発しないように気を付けましょう。

呼吸困難時には胸腔穿刺やドレーンで抜気します。

胸腔内に持続的に空気が漏れ出し、徐々に呼吸状態が悪化する場合には、緊急処置として、胸に針を刺し、漏れ出した空気を抜去する処置を行います。
刺した針によって肺が損傷しないように行わなければならないため、必要に応じて軽い鎮静処置を行います。

抜気を何度も繰り返す必要がある場合には、胸腔内に細いチューブ(ドレーン)を入れ、そこから空気を間歇的にまたは持続的に抜く処置を行います。

手術が必要となる場合もあります。

肺の損傷が大きく、抜気してもすぐに緊張性気胸になってしまうような場合には、手術によって損傷した肺を切除する必要があります。

事故などによっておこった気胸では、他の内臓の損傷などとの兼ね合いもあり、すぐには実施できない場合もありますが、慢性疾患によって形成されたブラやブレブの破裂の場合には、その部分を切除もしくは閉鎖しない限り、改善することはありません。
いずれの場合も手術リスクは低くはありませんが、獣医師とどのような処置を行うかよく相談して決めましょう。

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