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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の熱中症とは

高体温と重度の脱水による緊急事態です。

熱中症は高温多湿の環境下で、高体温・脱水が生じることによっておこる全身性の疾患です。
猫の熱中症は犬に比べると多くありませんが、様々な要因によっておこることがあり、発症時には緊急治療が必要です。

熱中症は主に夏に発生が多く、特に体の小さい子猫や体力の落ちた老猫では直ちに命の危険につながります。
発生を予防することが最も重要ですが、不幸にも発症してしまった場合にはすぐに病院へ連れて行き、集中治療が必要です。

猫の熱中症の症状とは

全身性に様々な症状が現れます。

熱中症というと体温が上がる、脱水になる、というイメージがありますが、体に起こる変化はそれだけではありません。

脳や腎臓、肝臓、心臓など、あらゆる臓器に影響を及ぼし、適切に治療されなければ命を落としかねない非常に危険な状態です。

・高体温
・脱水
・開口呼吸
・嘔吐
・下痢
・大量の涎
・頻脈
・粘膜の充血
・震え
・意識障害
・痙攣

高体温が続くと細胞を構成するタンパク質が変性し、全身の臓器に機能障害が生じます。
そのため、急性腎不全や肝機能障害なども生じ、尿が出ない、黄疸が見られる、DIC(播種性血管内凝固)と呼ばれる血液の凝固異常などが起こり、出血傾向や血栓症などの危険性も高まります。

このような状態では自力で水を飲むこともできず、また経口的な水分補給ができても体に起こった様々なダメージの治療にはならないため、病院で体を冷却しながら静脈点滴を行い、全身に起こったあらゆる異常に対して一つ一つ治療していかなくてはなりません。

そのためには一刻も早く病院へ連れていくことが必要です。

猫の熱中症の原因とは

環境要因が影響します。

高温多湿の環境に長時間置かれ、その間十分に水分補給ができないと熱中症を発症してしまいます。
車での長時間の移動や、夏季に閉め切った部屋で留守番させるなどといった状況下で起こります。

猫自身の要因でもおこりやすくなります。

短頭種、長毛種、肥満、子猫や老猫、持病(呼吸器疾患・心疾患・腎疾患)などといった要因によって、周りの環境に応じて熱を上手く放散することができず、熱中症を発症してしまうことがあります。

猫の熱中症の好発品種について

好発する品種はありません。

特にありません。

猫の熱中症の予防方法について

環境を整えて予防しましょう。

留守番をさせる際には、部屋の風通しを良くしたり、エアコンを調整するなどして部屋が高温にならないように気を付けましょう。
また、十分に飲水できるようにたっぷりと水を用意します。

多頭飼育の場合は全ての猫が十分に飲めるだけの量を用意しなくてはなりません。

また、特に暑い時期には冷却マットや接触冷感素材のベッドなどを活用することも検討しましょう。

体調に合わせて夏の用意をしましょう。

肥満傾向の猫は体に熱がこもりやすい傾向があります。
普段から食事管理と適度な運動を心がけ、できるだけ肥満にならないように気を付けましょう。

長毛種の猫もまた同様に熱がこもりやすくなります。
暑さには割と強い猫ですが、夏バテ傾向がいられるようであれば、暑い時期だけでも毛をサマーカットにして快適に過ごせるようにすることを検討してみましょう。

猫の熱中症の治療方法について

冷却処置を行います。

熱中症を起こしてしまった場合は、速やかに体を冷やし、体温を下げることが必要です。
病院へ向かう間も、保冷剤や水で濡らしたタオルなどで体を冷やしながら病院へ急ぎましょう。

体を効果的に冷やすためには、体に水をスプレーで吹きかけるあるいは濡らしたタオルを体にかけた状態で扇風機で風を送り、気化熱を利用して冷却すると安全かつ効果的です。

体温は直腸温を定期的に測り、39.4度まで下げることを目標にしますが、冷却処置の影響で処置後も体温が下がり続けることがあるため、逆に低体温にならないようにも気を付ける必要があります。

酸素吸入を行います。

熱中症によって気道の浮腫や呼吸困難が起こっている場合には、酸素吸入を行います。
自発呼吸ができていない場合は気管挿管を行い、人工呼吸が必要になる場合もあります。

輸液療法を行います。

重度の脱水が起こっているため、静脈点滴を行い、体の水分バランスを整える必要があります。
熱中症によるショック状態を起こしている場合は急速に輸液を行い、血圧や循環血液量を回復させなければなりません。

ショック状態を脱した後も、血圧を維持するためにしばらくは点滴が必要です。

急性腎不全、神経症状など全身に起こる異常に対応した治療が必要です。

熱中症で循環血液量が低下したことにより急性腎不全が起こり、尿が生成されなくなることがあります。
そのため、点滴を行いながら尿量をモニタリングし、必要に応じて腎臓の血管を開く点滴や利尿剤の投与を行います。

また低血糖を起こすこともあるため、定期的に血糖値をチェックし、必要に応じて糖を投与します。

神経症状としてけいれん発作を繰り返す場合には、抗けいれん薬を投与します。
中には脳の虚血や脳浮腫が起こっている場合もあり、必要に応じて脳のむくみをとる点滴が必要になります。

消化管にも高体温や血流低下などの影響で障害が起こります。
消化管上皮が傷害されると、腸管の免疫バリアが崩れ、敗血症などに陥る場合があります。
そのため、抗菌剤を投与し敗血症を予防するとともに、消化管の保護剤も投与します。

血液の凝固異常が起こると、時には致命的となることもあります。
出血傾向や血栓症の予防のために、凝固異常の治療として低分子ヘパリンというお薬を投与したり、時には輸血を行う場合もあります。

このように熱中症をおこすと、脱水と高体温だけでなく、全身のあらゆる臓器に同時に異常が生じるため、一つ一つに適切に対応しながら集中治療を行うことが必要です。

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