犬の貧血とは
赤血球が少ない状態を言います。
貧血とは、血液検査における総赤血球数(RBC)、ヘモグロビン濃度(Hb)、ヘマトクリット(PCV)のいずれか、あるいは全ての低下と定義されます。
貧血は、前述の赤血球に関する3つのデータをもとに自動機器によって表示される平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)によって、大球性低色素性、正球性正色素性、小球性低色素性、などに分類されます。このうち大球性低色素性貧血が再生性貧血に相当し、他は非再生性貧血です。
犬の貧血の症状とは
体への酸素供給が出来なくなります。
赤血球の最大の役割は、酸素の運搬になります。貧血の状態になりますと、様々な臓器や組織に十分な酸素供給が出来なくなり、その結果様々な障害が発生します。
貧血の一般的な臨床症状としましては、可視粘膜の蒼白、運動不耐性、呼吸促迫、失神、沈鬱、食欲不振などが見られます。貧血が重度になり元気が消失して初めて気づくこともあります。
犬の貧血の原因とは
再生性貧血
再生性貧血は骨髄での赤芽球系成熟過程には問題が無く、抹消における種々の原因による破壊の亢進、寿命の短縮、あるいは失血が原因となります。破壊の原因としましては、免疫介在性の血管外ならびに血管外溶血、変性ヘモグロビンのハインツ小体、バベシアなどによる感染性、先天性または後天性の赤血球膜の異常などがあります。
非再生性貧血
非再生性貧血は、一般に骨髄赤芽球系の低形成や無形成によるもので、感染性、赤芽球系の分化成熟異常による腫瘍性または前腫瘍性、細胞毒性薬物などによる薬物性、骨髄での白血病細胞の増殖による骨髄癆性、鉄欠乏などによる栄養欠乏性などが挙げられます。さらに、鉄の利用性低下に関連した炎症性、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患に関連したものに分類されます。
慢性腎不全では、腎臓から産生されていた造血ホルモンが産生されなくなり、貧血(腎性貧血)が見られるようになります。
犬の貧血の好発品種について
以下の犬種で好発がみられます。
- アイリッシュセッター
- アメリカンコッカースパニエル
- ケアーンテリア
- ゴールデンレトリバー
- サモエド
- シーズー
- ジャーマンシェパード
- チャウチャウ
- トイプードル
- ドーベルマン
- バセンジー
- ビーグル
- ブルテリア
- マルチーズ
- ラサアプソ
- ラブラドールレトリバー
貧血の原因によって好発犬種が異なります。
免疫介在性溶血性貧血は、アイリッシュセッター、アメリカンコッカースパニエル、シーズー、トイプードル、マルチーズなどが好発犬種とされています。
甲状腺機能低下症は、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ドーベルマンなどの犬種が好発犬種として挙げられます。
慢性腎不全は、ケアーンテリア、サモエド、シーズー、ジャーマンシェパード、チャウチャウ、バセンジー、ビーグル、ブルテリア、ラサアプソなどに遺伝的素因があるとされています。
感染症や毒物が原因の貧血の場合、あらゆる犬種で見られます。
犬の貧血の予防方法について
原因となる疾患の早期発見、早期治療をおこないます。
貧血の原因となる疾患の早期発見、早期治療をおこなうことが貧血の予防につながると言えます。
また、タマネギ中毒などの毒物や化学物質の誤飲が原因となる貧血は、環境を整えることで防ぐことが出来ます。
犬の貧血の治療方法について
貧血の治療と原因疾患の治療をおこないます。
重度かつ急速に進行する貧血に対しては、輸血を検討します。輸血のタイミングは貧血の背景によって異なります。ヘマトクリット値が下がっていても、犬が貧血状態に慣れてしまっている場合は臨床症状を示さないこともあります。そのため、貧血に関連した臨床症状が認められた場合、ヘマトクリット値が12%未満の場合、今後貧血に関連した症状が出た際にすぐに対応可能か否か、など総合的に判断されます。
G-CSFやエリスロポエチンによるサイトカイン療法や蛋白同化ステロイドなどは、一過性に血球の増加をもたらしますが、単独でおこなわれることはあまりなく、補助的治療としておこなわれます。
原因物質の除去、原因疾患の治療が重要です。毒物、薬物、感染症などの対処により貧血が改善される場合があります。しかしながら、骨髄の破壊が重度で非可逆的な場合は治療に反応しません。