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執筆獣医師:齋藤厚子先生
[記事公開日]  [最終更新日]
[ 目次 ]

猫の動脈管開存症とは

出生後に閉じるはずの血管が開通している先天性疾患です。

動脈管開存症とは先天性心疾患の一つで、出生後まもなく閉じるはずの血管が開いたままになっているために、血液の流れに異常が生じる疾患です。
犬では最も多い先天性疾患の一つですが、猫での発生は比較的稀です。

胎生期と出生後の血液の流れには少し違いがあります。
生まれてからは自分で呼吸をするため、血液は必ず肺を通ってガス交換を行い、酸素を取り込まなくてはなりません。
しかし、お母さんのおなかの中にいる胎生期には肺でガス交換は行えないため、お母さんの血液から酸素が供給され、血液は肺を通過する必要がありません。
出生後は全身から心臓に戻ってきた血液は、肺動脈から肺を通過して肺静脈、左心房に戻り、大動脈を通って全身へまた送り出されますが、胎生期には肺動脈と大動脈の間に動脈管という短絡血管があり、肺を通過せずに全身へ血流を戻す循環が成立しているのです。

肺動脈は通常出生時~出生後まもなく閉鎖し、肺でのガス交換に血流が乗るようにシフトしていくのですが、稀に動脈管が閉鎖せずに部分的に残ってしまうことがあります。
この状態を動脈管開存症といいます。

動脈管が残っていると、大動脈から全身へ流れていく血液の一部が肺動脈に流れ込んで肺に戻ってしまいます。
その結果、肺に流れ込む血液量が増え、肺に負担がかかったり肺から血液を受ける左心系に負担がかかるようになります。

できるだけ早期に発見して治療することが重要ですが、初期は症状が現れにくく、子猫は体や心臓が小さいために早期発見が難しい場合もあります。

猫の動脈管開存症の症状とは

若齢時には多くが無症状です。

動脈管開存症は若齢時には症状を示さないことが多いため、飼い主さんが気づくことなく経過していることが多い疾患です。
心臓の聴診を行うと雑音が聴取されるため、健康診断時などに心雑音として検出され、精密検査を受けることで診断につながります。

重症化すると運動不耐性などが現れます。

動脈管開存症が重症化すると、左心不全や肺高血圧などを起こし、運動時にすぐに疲れる、失神するなどといった症状が見られることがあります。

よくみられる症状には以下の様なものがあります。
・疲れやすい
・寝てばかりいる
・元気がない
・呼吸が速い
・咳をする
・舌や口の粘膜が青っぽい(チアノーゼ)
・失神する

通常の動脈管開存症は、大動脈から肺動脈に向かって血液が流れ込み、肺や左心系に容量の負荷がかかることで心不全症状が現れます。

これがさらに進行すると、動脈管内を流れる血流が逆向きになり、肺動脈から大動脈へ血液が流れる(右左短絡)ようになることがあります。
この状態では酸素交換を受けていない血液が全身に戻ってしまうため、体の酸素不足が起こり、チアノーゼや多血症などが見られるようになります。

猫の動脈管開存症の原因とは

先天性の疾患です。

動脈管開存症は出生後に閉じるはずだった動脈管が残ってしまうことによっておこる先天性の疾患ですが、それがなぜ起こるのかはわかっていません。

猫の動脈管開存症の好発品種について

以下の猫種で好発がみられます。

猫の動脈管開存症に関するある報告ではこれらの品種での発生がやや多かったとされていますが、猫では純血種よりも短毛雑種での発生が最も多いとされています。

猫の動脈管開存症の予防方法について

予防方法はありません。

なぜこの疾患が起こるのか解明されていないため、予防する方法はありません。

猫の動脈管開存症の治療方法について

外科手術で動脈管を閉じる方法があります。

動脈管開存症の根本的な治療方法は、何らかの方法で動脈管を閉じるということです。
その一つは、外科手術によって動脈管を確認し、その部分を糸で結紮して閉じるという方法です。

外科手術では確実に血管を確認して閉じることができますが、開胸手術を行わなくてはならないため、動物の体にかかる負担が大きい方法になります。
また、動脈管を通過する血液の量が多い場合には、一度に血管を結紮してしまうと急激な血流の変化が起こることに心臓や肺が対応できずに、かえって重篤な状態を招くことがあるため、その適応については慎重な判断を要します。

手術がうまくいった場合の予後は良好です。

血管の中からコイルを挿入して閉じる方法もあります。

上記の開胸手術とは別に、血管内に入れたカテーテルで動脈管にコイルという医療器具を挿入し、そこに血栓を形成させることで動脈管を閉じる方法もあります。

開胸手術に比べると手術による侵襲は非常に少ない方法ですが、コイルを挿入するのには高い技術と設備が必要となるため、手術可能な医療施設を紹介してもらう必要があります。

重症例では手術不適応となります。

動脈管開存症の中でも動脈管を通過する短絡血流が非常に多い場合には、診断時までに心臓に大きな負担がかかってしまい、手術はかえって危険と判断される場合もあります。

その場合には内科治療で心臓にかかる負担を軽減する治療を行います。
内科治療では血管拡張薬や利尿剤などが使用されます。
また、激しい運動を控えるなどといった生活面での配慮も必要です。

重症化によって手術が不適応となった場合、予後はあまり良くありません。

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