猫の乳腺線維腺腫様過形成とは
乳腺が急性に大きく腫大する疾患です。
猫の乳腺は非常に薄く、妊娠時以外は毛をよくかき分けてようやく乳頭を見つけられる程度です。
しかし、この乳腺が妊娠しているわけでもないのに急激に大きく、時には固く腫れあがることがあります。
これを「乳腺腺腫様過形成」といいます。
腫瘍ではなく良性の疾患で、犬には見られず猫にしか起こりません。
この疾患は避妊済みの猫や妊娠した猫にも起こることがあります。
妊娠した猫に治療としてホルモン療法を行うと流産してしまう可能性があり、無事出産したとしても乳腺線維腫様過形成で腫大した乳腺からは乳汁は分泌されないため、生まれた新生子には人工哺乳が必要になります。
ホルモン治療を行わなくても自然に退縮することがある一方で、大きく垂れ下がった乳腺を床で擦って傷つけたり、感染を伴って乳腺炎を起こしたりした場合には外科手術が必要になる場合もあり、その経過の観察には注意が必要です。
猫の乳腺線維腺腫様過形成の症状とは
急性に乳腺が大きく硬く腫れあがります。
乳腺線維腫様過形成は急性に乳腺が腫大するのが特徴です。
猫の乳腺は左右4対ありますが、複数(多くの場合は全て)の乳腺が腫れて固く硬結したようになり、特に下腹部にある第3・4乳腺が大きく腫れます。
腫大した乳腺には痛みなどの症状はありませんが、大きく腫大した乳腺は床で擦れてしまうことがあり、また猫自身が気にして舐めることで傷つけてしまうこともあります。
傷ができてそこから感染を起こすと乳腺炎となり、熱感や炎症による腫れがさらに加わり、痛みや食欲低下、元気消失などが見られるようになります。
猫の乳腺線維腺腫様過形成の原因とは
ホルモンの働きによっておこると考えられています。
はっきりとした発生機序はわかっていませんが、プロジェステロンという性ホルモンの働きが深く関与しているのではないかと考えられています。
猫の乳腺線維腺腫様過形成の好発品種について
好発する品種はありません。
好発する品種は特にありません。
比較的若い猫での発症が多く、中には性成熟前の子猫や妊娠中の猫、避妊手術済みの猫でも起こることがあります。
猫の乳腺線維腺腫様過形成の予防方法について
予防できる方法はありません。
ホルモン依存性の疾患と考えられてはいますが、避妊手術済みの猫でも発症が見られるため、効果的に予防できる方法は現在のところありません。
しかし、未避妊の猫の再発予防には避妊手術の効果が期待できるともいわれています。
猫の乳腺線維腺腫様過形成の治療方法について
ホルモンの拮抗薬を投与します。
この疾患はプロジェステロンによる乳腺の過形成と考えられているため、治療にはプロジェステロン拮抗薬(アグレプリストン)というお薬が使用されます。
皮下注射で投与しますが、1回の注射で完全に乳腺が退縮することは少なく、複数回の注射が必要です。
そのため、完治するまでには長ければ数週間から数カ月かかります。
自然に退縮する可能性もあります。
中には特に治療を行わなくても自然に退縮して乳腺が元に戻るケースもあるようです。
しかし、多くの場合は猫自身が気にして傷つけてしまうことが多いため、ホルモン拮抗療法を行うことが多いようです。
感染を伴っている場合は抗生物質で治療します。
腫大した乳腺を傷つけてしまい、感染が起こっている場合には、抗生物質での治療が必要です。
また皮膚が削れて大きく自壊し、全身状態を悪くしている場合には、乳腺を切除する手術を行うこともあります。