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獣医師
齋藤厚子
秋バテと寒さに負けないペットの秋支度

秋バテってなあに?

夏に起こる「夏バテ」は聞いたことがあると思いますが、「秋バテ」はあまりなじみがない言葉かもしれませんね。

秋バテは近年注目され始めた、秋に起こる体調の乱れの原因です。
ヒトの秋の体調不良に関して使われ始めた言葉ですが、一緒に生活している我々のペットたちにも同様に秋バテが起こっていると考えられます。

暑い夏に比べると過ごしやすく感じる秋ですが、日中と朝夕の気温の寒暖差に加え台風や秋雨前線などの影響で気圧の変化が起こりやすく、冷たい雨が降ったかと思えば残暑で暑さが戻ってくるなど、気象が目まぐるしく変化する季節です。

このような変化は体の免疫機構やホルモンのバランスを乱してしまうことがあり、体調不良が起こりやすくなります。

また夏に冷たい水をたくさん飲んでいたことで胃腸の働きが低下していたり、クーラーで冷えすぎた部屋で長時間過ごしてきたことで自律神経の働きを乱し、胃腸機能障害や全身の血行不良などから元気がなくなってしまうこともあります。

このようなことからおこる体調不良がいわゆる「秋バテ」です。
ヒトでは頭痛や体のだるさなども感じるようですが、犬猫の症状として飼い主さんが気付きやすいものとしては、食欲不振、元気がない、寝てばかりいるなどといった、どんな病気でも見られるいわゆる「非特異的症状」と呼ばれるものばかりです。
秋バテ対策にはまずこのような変化にちゃんと気づいてあげられることが大切です。

秋バテの予防・対処としては、部屋や体を冷やしすぎないこと、おやつばかりではなく栄養バランスの良い食事をしっかり食べさせること、お散歩や室内遊びで毎日体を適度に動かすこと、生活リズムを整えぐっすり眠れる睡眠を確保してあげることなどが重要になります。

このような愛犬・愛猫の秋バテ対策が、もしかしたら飼い主さん自身の秋バテ対策にもなるかもしれませんね。

秋と食欲の変化

秋は食欲が変化しやすい時期です。

夏バテから秋バテに移行して食欲不振が続いてしまう子もいれば、過ごしやすい秋に突入したことで食欲が全開になる子もいます。

・食欲不振がある場合
秋バテによる食欲不振では、消化管の働きが低下して本調子に戻れなくなっていると考えられます。

このような時、少しでも食べてもらいたいがために好きなおやつをたくさん与えてしまいがちですが、おやつは食事の代わりにはなりませんのであまりお勧めできません。

できれば消化性の良い良質な高タンパクフードを与えるようにして、胃腸にかかる負担を軽減しつつしっかり栄養補給できるようにしてあげましょう。
食いつきが悪い場合には、食欲を刺激するために嗜好性の良い缶詰などを少量トッピングするなど、与え方を工夫してみましょう。


・食欲が増加している場合
夏バテで食欲が低下していた犬猫も、一見元気に夏を乗り切った犬猫も、多くは夏の暑さで体力を消耗しています。
秋が近づき少し涼しくなると、暑さのストレスから解放され胃腸の調子が本調子に戻ってよく食べるようになり、さらに暑さが和らぐことで活動的になるため運動量の増加によっても食欲が増し、結果として以前より食欲が増加してしまうことがあります。

また秋の食欲には、寒い冬に向けて体脂肪を増やそうとする動物としての習性も関連しているようです。

よく食べるのは飼い主さんとしてはうれしいことですし、夏の間に暑さで消耗した体力を回復させるためには必要なことのようにも思えますが、食べすぎは肥満の原因となり、二次的に他の病気を引き起こすことにもなりかねませんのであまり楽観視できません。

もっと食べたがっても一日の給餌量は守るようにしましょう。

あまりにも食欲が増して盗食などが起こるようであれば、低脂肪・低カロリーで高タンパクなフードに切り替え、食事量を調整することを検討してもいいかもしれません。


食事は体調を整えるうえで最も重要です。
本格的に寒くなる冬が来る前に適切な食事管理で体調を整えてあげましょう。

秋の気温低下に伴う体の変化

秋になると日中は暖かくても朝夕は少しずつ冷え込むようになり、一日の中でも寒暖差が大きくなってきます。
こうした寒くなり始めの季節にはいくつか起こりやすい病気があります。

・膀胱炎などの尿路疾患
・下痢などの消化器の不調
・関節疾患
・換毛に伴う疾患
・心疾患や呼吸器疾患の悪化

① 尿路疾患
犬も猫も、暑い夏には比較的水をよく飲みますが、涼しくなるにつれて飲水量が減ります。
すると尿量も少なくなり、尿が濃くなるために尿石症や膀胱炎などの尿路疾患が起こりやすくなります。

体質的に尿中に結晶や結石ができやすい犬猫の場合、水分を十分摂取することは尿石症の発症予防に重要ですので、缶詰タイプのフードを混ぜたり、ドライフードをふやかして与えるなど水分摂取量を増やす工夫をすると良いでしょう。

尿石症対策用のフードもありますが、それらを与えても毎年寒い時期に尿石症を繰り返してしまう場合にはサプリメントなどを活用してみるのもいいかもしれません。

② 消化器症状
上記のように、秋は夏バテの影響や秋バテで胃腸の働きが弱っている犬猫も割と多く見られ、中には軟便や下痢などの消化器症状を示してしまうことがあります。

予備体力の少ない子犬・子猫や、免疫や体力の低下しているシニア犬・シニア猫では症状がダラダラと長引くことでさらに体力を削られ、ドミノ倒しのように体調不調が連鎖してしまうことがあります。
腸は免疫器官の一つとしても重要な臓器ですので、調子が悪いと全身状態に大きく影響してしまうのです。

消化器症状が現れた場合にはできるだけ早く対処して調子を戻してあげましょう。

まずは病院で他の異常がないかどうかを見てもらうことが必要ですが、問題なければ消化性の良いフードや整腸剤、お腹の調子を整える乳酸菌のサプリメントなども活用してお腹から元気を取り戻してあげましょう。

③ 関節疾患
寒くなり始めると筋肉が寒さでこわばっているために関節や腰にトラブルが起こりがちです。
この時期に起こりやすいよく見られる疾患として代表的なのが、椎間板ヘルニアや股関節・肩関節・膝関節などの関節炎症状の悪化、膝の十字靱帯の断裂などです。

背中の骨や全身の関節は骨と骨の間をつなぐ靱帯や軟骨、関節包と関節液、その周囲を囲む筋肉の働きでしなやかに動いているため、関節を動かすために伸び縮みする筋肉がこわばってしまうと関節の動きが悪くなって関節自体に負担がかかって痛めたり、動きが悪くなったりします。

そうならないためには運動で筋肉をしっかり維持すること、肥満など過剰な体重で関節に負担をかけないようにすることがまず重要です。

すでに関節炎などを発症してしまっている場合には、できるだけ悪化させないように体重管理をすることももちろんですが、負担がかからない程度の運動を続けて筋肉を落とさないことや、関節を保護する成分を積極的に取り入れて関節をサポートしてあげることが症状の緩和に役立ちます。

また寒い時期には防寒をしっかりすること、寒い日に外で運動する前には室内で少し準備運動させるなどといったことも発症や悪化防止のために重要です。

④ 換毛に伴うトラブル
秋は冬に向けて夏毛から冬毛に換毛が起こります。
この時期はたくさんの毛が抜けるため、こまめにブラッシングして抜け毛を取り除いてあげましょう。

換毛期にはもともと膿皮症やアレルギー疾患、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を抱えている犬猫の症状が悪化してしまうことがあります。
ブラッシングしながら皮膚の状態をチェックし、必要に応じてシャンプーや投薬など速やかに対処できるようにしましょう。

また自身で念入りにグルーミングをする猫では、抜け毛を飲み込んでしまうことによって消化管内に毛玉が形成されて起こる「毛球症」も起こりやすい時期です。
特に長毛種で起こりやすいため、ブラッシングやシャンプーはもちろん、毛球症に対応したフードや毛球症対策用の潤滑剤を与えておくなど早めに対処しておくようにしましょう。

⑤ 心疾患や呼吸器疾患への影響
寒さや季節の変わり目に伴う気圧の変化などは、もともと心臓疾患や呼吸器の疾患を抱えている犬猫には負担が大きな負担をかけます。

冷たく乾燥しがちな空気を吸うことで咳が出やすくなったり、暖かい室内から外に出る際の気温の変化によって血管が収縮することで心臓に負担がかかって苦しくなることもあります。

このような疾患がある場合には特に寒さ対策をすることが重要で、室内も大きく室温の変化がないようにし、ある程度の湿度を保ってあげましょう。
本格的に寒くなる前に防寒のための服を用意したり、温かいベッドやペット用のヒーター、加湿器などを用意してあげると良いでしょう。

秋の味覚にも要注意

秋は収穫の時期でもあります。
秋にとれる果物や秋ならではの食材は私たち人間にとって楽しみの一つですが、中には動物にとってあまり好ましくないものもありますので、間違って与えないように気を付けましょう。

① ブドウ
秋に気を付けたい代表的な食べ物は「ブドウ」です。
犬はブドウをたくさん摂取すると腎臓の細胞が破壊されて急性の腎機能障害を起こすことが知られています。
生のブドウであっても加工してあるレーズンのようなものでも同様です。

目安としては体重1kg当たり32g程度以上のブドウを摂取すると発症しやすいようですが、個体によってその感受性も異なるようですので、少量でもブドウは与えないように気を付けましょう。

② 銀杏
同じく秋の味覚である「銀杏」も中毒症状を示すことがあります。
銀杏に含まれるメチルピリドキシンという成分はビタミンB6と類似しており、体内でビタミンB6と拮抗してしまう物質です。
銀杏を食べるとメチルピリドキシンによって神経伝達を抑制するアミノ酪酸の生成が阻害され、神経が過剰興奮するような中毒症状(不整脈や呼吸困難、興奮状態による痙攣・意識の混濁)が起こり、最悪の場合は死に至ることもあります。

食べることが危険なだけでなく、銀杏の周りの実の部分に含まれる成分は皮膚に炎症を起こすこともあります。
秋の公園には銀杏がたくさん落ちていることがありますが、口にしたり踏みつぶさないように気を付けてあげましょう。

③ 毒キノコ
キノコにも注意が必要です。
お散歩コースとなるような日当たりの良いところにはあまり生えていないかとは思いますが、ペットを連れて山に入ったりキャンプに行く場合などは毒キノコと接触する機会があると考えられますので、それらを誤食してしまわないように気を付けなくてはなりません。

リードの届く範囲であれば飼い主さんが制御することでキノコを口にする危険も減らせます。
アウトドアに連れていく場合にも必ずリードを付け、決して自由に放してしまわないようにしましょう。

終わりに

季節の変わり目にペットが体調を崩すことは比較的よくあることです。
様子を見ていたらなんとなく調子が戻った、ということもありますが、季節的な体調不良以外の病気が隠れていることもありますので、できれば悪化する前に病院で一度診てもらいましょう。

また体調不良があったことは簡単にメモを取っておくと次のシーズンの対策に役立ちます。
愛犬・愛猫の季節ごとの傾向がわかれば体調不良を起こさずに過ごすための準備ができますので、今年の様子は来年の秋支度に役立てられるように簡単に記録しておくと良いでしょう。

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